「コンクールで勝つことより大切なこと。子供の『心と体』を守る、豊かな芸術教育」

ピアノを習うとき、多くの人が「コンクール」や「順位」を一つの目標にします。最近では小さい子どもの頃からコンクールで競い合いながら練習している子どもたちも少なくないようですね。コンクールが間違ってるとは思いません。コンクールのおかげでとっても成長し、大変良い経験となった生徒たちもたくさんいます。けれど、私はいつも自問自答します。音楽のすべては、誰かと競うことなのでしょうか?
音楽には、癒しや穏やかさ、平和といった、争いとは真逆の側面が豊かに広がっています。競い合う場所からは見えてこない、もっと広くて自由な世界があるはずです。

【心と体の密接な関係】
特に感受性の強い子供にとって、心と体は驚くほど直結しています。「間違えてはいけない」「勝たなければいけない」というプレッシャーは、即座に小さな肩や背中を強張らせます。
私は、長年の演奏活動や指導の中で、無理な力技を続けた結果、手や肩を壊し、大好きだったピアノを弾けなくなってしまった人を何人も見てきました。最近耳にすることが増えた「ジストニア」などの深刻な病も、無理な奏法が無関係ではないと感じています。

【「習慣」という名の、一生の財産】
一度、脳が「ピアノ=緊張」と覚えてしまい、体がその弾き方を習慣にしてしまうと、それは一朝一夕には修正できません。練習すればするほど、その間違った習慣が深く刻まれてしまう……。そんな悲しいことはありません。
だからこそ、まだ真っ白な子供の頃に「脱力」と「安心感」をセットで学ぶことが、何よりも大事なのです。

【私の願い】
年間20回以上のステージに立つ私自身、膨大な練習時間を支えているのは「自分らしい音を追求する喜び」と「体に負担をかけない技術」です。
私のピアノレッスンは、順位を競うことを重点にしたくありません。

音の色の変化に耳を澄ませ、自分の心に一番しっくりくる言葉を音に乗せていく。そんな穏やかな対話を通じて、一生、自由に弾き続けられる「真の技術」を育んでいきたいと願っています。