私も、学生時代に腱鞘炎になりました。
寒い冬に、ゴリゴリ何度も何度も練習し続けて、痛い思いをしました。
みなさんも、きっと経験ありますよね……?
だけど、ひどいとそれからピアノが弾けなくなったり、治るのに年単位でかかったり。
そんな話を聞くたびに、本当に胸が痛みます。それは、あまりにも辛すぎるから。
ピアノの練習は肉体的にも負荷がかかります。そのうえ、精神的にも追い詰められるものです。
ある人にとっては平気なことでも、別の人にとっては身体を壊す原因になる。
同じ量の反復練習をしても、筋肉に変わる量も、耐えられる強度も人それぞれなのです。
最近、お洋服の似合わせで「骨格ストレート」や「ウェーブ体型」という言葉をよく耳にしますよね?
ピアノも、あれと同じだと思うのです。
骨太で筋肉がつきやすい体質もいれば、華奢で筋肉がつきにくい「ぷよぷよさん」もいる。
もし「ぷよぷよさん」が、憧れのピアニストに近づこうと同じ練習を無理に重ねたら……。
素晴らしい感性を持っているのに、身体が耐えきれず壊れてしまう。
これは音楽界の悲劇です。
スポーツの世界なら、体重別や男女別でフェアに戦いますよね。
でもピアノの世界は、がっしりした子も、華奢な子も、みんな同じ土俵。
「コンクールも、せめて階級別ならいいのに(笑)」
なんて思ってしまうほど、個体差を無視した練習は危険です。
階級が違えば、トレーニング法も、見せるべき魅力も違うはず。
私は、その子の「骨格」と「心」に合った、無理のない、でも最高のパフォーマンスを引き出す戦略を一緒に考えたい。
かつて寒い冬に腱鞘炎になった私に、今の私から伝えたいことがあります。
「自分の身体と心に対話しながら、自分の『自然体』を知ろうとしなさい。
入試やコンクール、いろいろあるけれど、一番大事なのは自分の身体を自分で守ること。
練習は大事。だけど、負荷は今の自分に対して、ほんの少しずつ。
壊れない程度に、自分をコントロールしていきなさい」
若い頃、先生からの無茶振りは本当にありがたかった。
そこを乗り越えたとき、自分の枠を超えていけるから。
でも一方で、身体の声を無視して必死になりすぎると、最悪、弾けなくなってしまう。
残念ながら、ロボットではない私たちは部品交換ができません。
だからこそ、自分の「骨格」や「筋肉の質」に合った、自分だけの奏法を見つける必要があるのです。
今のピアノ教育や奏法を、もう一度捉え直す時期にきていると感じます。
人間だからこその演奏。
皆と同じ練習量をこなす競争ではなく、自分自身の体質を理解し、感情をコントロールし、身体の声を聴く。
それが、一生音楽を愛し続けるための、そして本番で最高の演奏をするための最短ルートだと、私は信じています。




